起動が速くなるだけならいらないですよね?
少し前ならSSDと聞いてもピンとこない方が多かったと思うのですが、今はずいぶんと普及しました。ご存知の通り、SSDはHDDよりも高速な読み書きができる補助記憶装置(ストレージ)です。
私も最初はSSDってそんなに良いものなのかなと懐疑的で、やたら勧めてくる人のことをSSD信者か…などと思っていました。しかし、あまりにも周りの人に勧められたので、1年ほど前にメインの自作デスクトップPCのストレージをHDDからSSDに変更したところ、今は見事にSSD信者になってこんな記事を書いてしまっているというわけです。
「SSDは起動が爆速」というのはよく使われる売り文句ですが、それはSSDの魅力のごくごく一部です。SSDの真の魅力はPC性能の底上げです。ある程度のスペック(CPUやメモリ)を積んだPCにおいては、体感的なPC性能の律速(ボトルネック)はストレージであることが多く、このストレージ性能を上げることで、数値上のスペック以上に体感的なスペック、すなわち作業中に感じる本当の快適さが上がるのです。
SSDの真の魅力
クリック後の反応が速くなった
何かアプリを起動する、例えばExcelだったりWordだったりブラウザだったりを開くときの反応の速さが全然違います。HDDのときは、開くと少しマウスカーソルがクルクルして3秒くらいで起動画面などが表示されていたのですが、SSDは一瞬です。
たかが3秒なぜ待てないのかと思う方もいると思いますが、自分の入力に対する応答が速いというのは思っている以上に快適なことです。
さらに、ブラウジングも速くなった気がします。キャッシュの読み込みが速くなったのでしょうか。
とにかく、何かをクリックした後の反応がSSDは段違いに速いので、起動のみならず様々な場面でその恩恵にあずかるはずです。
I/O でフリーズすることがなくなった
私の今使っているデスクトップPCはCore i7でメモリも16GBです。ハイスペックと言っても問題はないかと思います。しかし、HDDのときはときどきフリーズしてしまうことがありました。タスクマネージャーを開いてみると、大抵は「ディスク」が100%に張り付いている…そうです、HDDがボトルネックだったのです。
しかし、SSDに変えた後はI/Oに起因するフリーズはありません。読み込み/書き込みが共に速いので詰まることがないのでしょう。平常時はタスクマネージャーで確認したところ1%~2%ほどです。
物理的な衝撃に強くなる
HDDはディスクを回転させてデータを読み書きします。ある程度の読み書き速度を確保するために、磁気ヘッドという読み取るための部品とディスクの間には僅かな隙間しかなく、そこに衝撃が加わればHDDは壊れてしまします。
しかし、SSDはHDDと構造が異なり、回転する部分がありません。原理的にはUSBメモリとかに近い感じで、物理的に動いている部分はないのである程度の衝撃ならデータ消失の心配はありません。
ですから、あまりよいことではありませんが、起動中のPCに椅子をぶつけてしまったりしてもSSDなら大した問題にならないというわけです。
質量が軽い
軽いのは操作性でなく物理的な質量にも当てはまります。HDDにはディスクがあるために物理的な意味でも重くなってしまいますが、SSDは非常に軽いです。最初にSSDを持ったときは空箱なのではと思ってしまうくらいでした。デスクトップPCの場合特に移動はしないので問題にはならないと思いますが、ノートPCには結構重要な問題です。
フラグメンテーションの影響を受けにくい
書き込みと削除を繰り返していると、そのうち連続した領域を確保できなくなります。そのようなときは、データをあちこちに分けて書き込むことになります。このようにデータが飛び飛びに保存されてしまうことをフラグメンテーションといいます。
しかしこれでは、読み込む際はあらゆる領域を読み込まないといけないので時間がかかってしまいます。これは、HDDにおいて顕著です。というのも、HDDはシーケンシャルアクセスを得意とする一方、ランダムアクセスが苦手だからです。しかし、SSDはランダムアクセスも高速に行えるのでそこまで大きなパフォーマンスの低下は起こらないと言われています。
なぜ起動の速さが強調されるのか
このようにSSDには起動の速さよりも注目されるべきメリットが沢山あります。しかし、なぜSSDとHDDの比較をする時、「起動時間」に焦点を当てる動画や記事が多いのでしょうか。
その一番の要因は、比較結果が分かりやすいからだと思います。起動時間なら「SSDは10sだが、HDDは50sなのでSSDはHDDに比べて5倍速い」のように定量的なアピールができます。
一方、「HDDでは3秒待たないといけないところが、SSDだと0.2秒に!」なんて言っても「いや、2.8秒待てばいいじゃん」と思ってしまいますよね。インパクトが弱いです。しかし実際には、その2.8秒の差はありとあらゆるときに発生するのです。Wordを開く時、エクスプローラを開く時、VSCodeを開く時など。たしかに短い時間ですが、塵も積もれば山となるでしょう。それに、自分の作業を外的な要因で止めなければならないというのは思った以上にストレスのかかることです。
まとめ
- SSDの魅力は「起動の速さ」以外にも「操作に対する応答の速さ」「I/O起因のフリーズがなくなる」「耐衝撃性」「物理的に軽い」などがある
- これらの魅力は伝わりにくいが、実際に自分で操作してみるとよく分かる